この記事でわかること
- AI に受注・在庫の管理を作らせた時間・行数・試験の結果
- 専用のサービス・ノーコード・AI で自作の分かれ目と料金
- 作った後に人が決める 6 つと、保守の分担
確認した環境: Claude Code 2.1.308(Opus 5.5)・Node.js 24.22.1 / 実験は編集部の検証用のサーバー(Linux)で 2026年10月24日 / 料金と制度は 2026年10月24日に確認
受注は Excel の一覧、在庫は別の Excel の表。出荷したのに在庫の表を直し忘れて、棚の数と合わない。こうした困りごとを、AI に頼んで自社のシステムにできるのでしょうか。

先に答えると、作れます。編集部の Claude Code に、架空の雑貨の卸(従業員 10 人)の受注と在庫の管理を作らせると、要件を書き始めてから 13 分 22 秒(Claude Code の作業の時間)で、試験 32 件が通る Web アプリができました。ただし、権限・バックアップ・消費税と請求書・記録を残す年数・直す人・見てよい人の 6 つは、AI では決められず、人が決めることとして残りました。


なぜ試したか: 「作れるか」より「使い続けられるか」で迷う
業務のシステムを新しくするとき、道は 3 つあります。会計や勤怠のような専用のサービスを契約するか、kintone のようなノーコードの道具(画面で部品を並べてアプリを作る道具)で作るか、AI に頼んで自作するかです。
AI で作れるかどうかは、試せばすぐ分かります。分かりにくいのは、作った後に何が残るかです。そこで、Excel で受注と在庫を回している小さな会社を想定して実際に作らせ、時間・行数・試験・直した所を記録しました。
架空の卸の受注と在庫を、4 つの段で作らせた
条件: 架空の会社とデータで、人は口を出さない
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| お題 | 架空の雑貨の卸(従業員 10 人・取引先 30 店ほど・商品 40 品ほど)。受注と在庫を別々の Excel で管理している |
| 困りごと | 出荷しても在庫の表を直し忘れる・品切れに気づくのが遅い・だれがいつ直したか分からない |
| 作る人 | 編集部の Claude Code(Opus 5.5)。要件も、架空の会社を想定して Claude Code が書いた。人は途中で口を出さない |
| 作り | Node.js(サーバーで JavaScript を動かす仕組み)に組み込まれた部品だけ。データは SQLite(1 つのファイルに入る小さなデータベース)に置く |
| データ | 架空の商品 12・取引先 6・受注 20 件。本物のデータは使わない |
| 動かす場所 | 編集部の検証用のサーバー(CPU 24 コア・メモリ 94GB)の中だけ。外には公開しない |
| 記録 | 段ごとの開始と終了の時刻・やり直しの回数・行数・試験の数を、ファイルに残す |
段は、要件を書く → 作る → 試験 → 直す の 4 つです。試験は、決めたとおりに動くかを自動で確かめる手順のことです。Node.js に組み込まれた SQLite の機能は、公式のドキュメントでは「Release candidate」(正式版の手前)の段階です。
要件に書いたこと
要件には、作る物 12 項目と、試験で確かめる「受け入れの条件」15 個を書きました。主な所をまとめると、次のとおりです。
・受注: 登録・一覧(日付・取引先・状態・金額で絞る)・CSV の書き出し
・受注の状態: 受付 → 出荷済み / 受付 → 取消(理由が必須)。データは消さない
・在庫: 在庫数・引当(まだ出荷していない受注の数)・引当できる数・発注点
・権限: 営業 = 受注の登録 / 倉庫 = 出荷・入荷 / 管理者 = 取消・棚卸の調整・単価の変更
・監査の記録: だれが・いつ・何を・前と後を残す。削除の機能を作らない
・「人が決めること」を画面に出す。消費税と請求書は作らない
最後の行は、作る前に決めました。決めていないことまで AI に任せると、決めたかのように作り込まれてしまう、と考えたからです。


- 作り終えた時点のコードは 670 行で、直した後は 678 行です。試験のコードは、別に 361 行あります。
- この時間に、要件の中身を考えた時間は入っていません。実際の会社なら、困りごとの聞き取りと、例外(返品・分納など)の洗い出しに、もっと時間がかかると考えられます。
できた画面: 権限と「人が決めること」が見える

- ① 使う人: 試作なので、ログインの仕組みはなく、右上で選ぶだけです。
- ② ボタン: 営業の人には、出荷と取消のボタンが押せない状態で出ます。画面で押せなくするだけでなく、送られてきても断ることを試験で確かめました。
- ③ 金額: 税抜の合計だけを出します。消費税と請求書は作らず、「人が決めること」として示しています。

- 引当できる数は、在庫から、まだ出荷していない受注の数を引いた数です。発注点を下回ると印が付き、ホームにも並びます。
- 出荷にすると在庫が減り、在庫の動き(入荷・出荷・調整)に 1 行ずつ残ります。どの商品も、在庫の数と動きの合計が合うことを試験で確かめました。
- 棚卸の調整と単価の変更は、管理者だけができます。調整には理由が要ります。

6 つのどれかが未決のあいだは、すべての画面の上に帯で知らせます。決めたら、決めた人・日付・答えを書き込む作りです。

監査の記録は、データベースが削除と書き換えを断る作りにしました。取消も削除ではなく、状態を「取消」に変えて、理由・人・日時を残します。
試験はすべて通った。それでも直す所が 4 件あった


最初に書いた 29 件の試験は、3 回目の実行ですべて通りました。2 回目までの失敗は、試験の動かし方と書き方の誤りで、アプリの不具合ではありませんでした。
その後、使う人の立場で読み直し、画面を撮って確かめると、直す所が 4 件見つかりました。
- F1: 使う人を選んでいなくても、決まった営業の人として受注を登録できました。選んでいないときは見るだけにし、書き換えは断るようにしました。
- F2: 全角の数字(「15」)を入れると、「整数で入れてください」と断られました。半角にそろえてから確かめるようにしました。
- F3: ホームの「今月の受注の合計」が、2026年10月に決め打ちされていました。11 月になっても 10 月の合計を出し続けるところでした。
- F4: スマホの幅で見ると、表の字が縦に 1 字ずつ並んで読めませんでした。
F1〜F3 は、先に試験を足して、失敗することを確かめてから直しました。最後は 32 件すべてが通っています。


なぜ、試験が通っても見落としたのか
確かめたことは、4 件とも「要件に書いていなかったこと」だという点です。試験は要件の受け入れの条件から書いたので、要件にない使い方は確かめていませんでした。
ここからは編集部の推測です。AI は、書いた要件をよく守ります。
その分、全角の数字や、スマホで見る倉庫の人のように、書かれていない日常の使い方は抜けやすいと考えられます。要件に「だれが・どの機械で・どんな入力をするか」を書いておくと減らせるはずですが、今回は確かめていません。
見つけたが直していない所も 2 つあります。監査の記録の名前の折り返しと、架空の受注の時刻が夜中になっていることです。使い始めたら、こうした小さな直しが続きます。
作りやすい物と、買うほうが楽な物を分ける


今回作ったのは、受注と在庫のように、社内で形を決められるものです。会計・給与・勤怠の打刻のように、法令で計算や保存が決まっているものは、作れても直し続ける手間が残ります。
- 勤怠: 労働安全衛生規則 第52条の7の3 は、労働時間の状況を把握する方法を「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」とし、事業者に、その記録を作成して 3 年間保存するための措置を求めています。
- 帳簿と書類: 法人は、帳簿と、注文書・契約書・領収書などの書類を 7 年保存します。青色申告で欠損金が出た事業年度などは 10 年です(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」令和8年7月の表)。
- 自作のシステムで電子取引のデータを扱うとき: 同じ一問一答は、要件の 1 つに、自社開発のプログラムを使う場合の「電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け」を挙げています。ほかに、タイムスタンプなど 4 つの措置のどれかが要り、その 1 つが、訂正や削除の記録が残るシステムか、訂正や削除ができないシステムで受け取りと保存をすることです。
- 請求書: インボイスには、登録番号や、税率ごとに区分した消費税額など、6 つの記載事項があります(国税庁 タックスアンサー No.6625)。
試作が、これらの要件を満たすかどうかは確かめていません。作る前に、税理士や社会保険労務士に、自社の場合を確かめてください。銀行の明細やカードの決済のように外部との契約が要るものは、自作で脱 SaaS はできる? 作りやすいものと難しいもので説明しています。
専用のサービス・ノーコード・AI で自作は、直す人と料金の増え方で選ぶ


ノーコードと AI で自作の違いは、作る速さより、作った後に出ます。ノーコードは、道具の画面の中で直します。AI で自作すると、自由に作れますが、直すのも自社です。
道具の料金は、次のとおりです(2026年10月24日に公式のページで確認)。
| 道具 | 料金 | 条件・試し方 |
|---|---|---|
| kintone | ライト 月 1,000 円・スタンダード 月 1,800 円(1 ユーザー・税抜) | どちらも 10 ユーザーから。スタンダードを 30 日間無料で試せる |
| Power Apps | Premium ¥2,998(1 ユーザー・月あたり・年払い・税抜) | 開発者向けのプランは無料 |
| AppSheet | Starter 5 米ドル・Core 10 米ドル(1 ユーザー・月) | Core は Google Workspace の多くの有料プランに含まれる。10 人までのテストは無料 |
| Claude(Claude Code を含む) | Pro 月 20 米ドル(月払い)・Max 月 100 米ドルから | 税は別 |
10 人で使う場合、kintone のスタンダードは月 18,000 円(税抜)、Power Apps の Premium は月 29,980 円相当(年払い・税抜)です。AI で自作する場合の道具代は作る人の分だけですが、ほかにサーバーの費用と、直す人の時間がかかります。人数が増えるほど人数で増える道具は高くなり、社内に直す人がいなければ自作は安くなりません。
自分の場合は、次の 4 つを順に確かめます。
- 法令で決まった計算や保存か: はいなら、専用のサービスを使います。
- 道具の画面の形で足りるか: はいなら、ノーコードの道具を試します。
- 二重入力が残る・人数分の料金が重い・ほかのシステムとつなぐ: 当てはまれば、AI で自作の候補です。
- 毎月、直す人と時間をとれるか: とれなければ、自作はしません。
作った後の保守: 直すのは社内の人


作る道具の会社のサポートが、作ったアプリのコードまで直すとは限りません。Lovable は「The support team cannot debug the code in your project.」と、Replit は「Replit Support is unable to provide hands-on debugging or fixes for individual application-level code.」と、サポートの方針に書いています。
AI に直してもらうことはできます。ただ、直すかどうかと、直ったかを決めるのは人です。今回の試作でも、4 件の直しを見つけたのは、最初に書いた試験ではなく、読み直しと画面の撮影でした。
バックアップも人の仕事です。国税庁の一問一答は、電子取引のデータについて、バックアップデータの保存は法令上の要件ではないとしたうえで、保存期間を通じて適切に保存するために、保存することが望まれると書いています。
試作では写しを作るボタンを付けましたが、置き場所はアプリと同じ機械のままです。機械ごと壊れると、写しも一緒に消えます。
仕事で使うなら、書き換えない小さな物から始める
いきなり全部を作り直すより、元のデータを書き換えない物のほうが、失敗しても Excel に戻れます。たとえば次のような物です。
- 在庫: 出荷の記録と在庫の表を突き合わせ、合わない品を毎朝一覧にする
- 受注: Excel の受注一覧を、取引先・状態・金額で探せる画面にする。入力はしばらく Excel のまま
- 顧客: 問い合わせと対応の記録を、だれが書いても同じ形で残せるようにする
- 勤怠: 打刻は専用のサービスに任せ、残業の集計の下書きだけを作る
AI への頼み方は、次の形が使えます。「スマホでも見る」「数字を全角で入れる人もいる」と最後の 1 行が、今回の実験から足した所です。
受注と在庫の管理の Web アプリを作ってください。
・いまは Excel で管理している(受注の列: 受注日・取引先・品名・数量・金額・状態・担当)
・使うのは営業 3 人・倉庫 3 人・事務 2 人。倉庫の人はスマホでも見る
・記録は消さない。取消は状態を変え、理由・人・日時を残す
・架空のデータで動かす。本物のデータは使わない
・数字を全角で入れる人もいる
・決めていないこと(権限・バックアップの置き場所・税の計算など)は、作り込まずに一覧で画面に出す
・要件に書いていない使い方でも試し、見つけた所を一覧にする
使う前に、本番のデータ・公開・補助金を確かめる
- 本番のデータと鍵を渡さない: AI に触らせるのは、試す場所と架空のデータだけにします。AI のエージェントが本番のデータベースを消した事例は、AI でアプリを作って、ストアに出すまでで紹介しました。
- 確認なしで任せる範囲を決める: Claude Code にどこまで確認なしで任せるかは、Claude Code にどこまで任せてよい?で実験しています。
- 公開する前に、ログインを決める: 試作は使う人を選ぶだけで、ログインの仕組みがありません。社外から届く場所に置く前に、だれが見てよいかを決めます。
- 補助金を当てにしない: デジタル化・AI導入補助金2026 の IT ツール登録要領は、「製品が完成されておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア」と「特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの」を、登録の対象外にしています。自社専用に作るシステムは、これに当たりやすいと考えられます。使えるかどうかは、事務局や IT 導入支援事業者に確かめてください。
- 決まりは変わる: 料金と制度は、契約や開発の前に、公式のページで確かめてください。
次にやること: 作る前に、人が決める 6 つに答える
まず、いまの Excel の受注一覧と在庫の表を並べ、困っていることを 3 つ書き出します。次に、この記事の「人が決めること」の 6 つに、自社の答えを 1 行ずつ書きます。答えが書けない項目があれば、作る前に、決める人を決めます。
決めたことと進み具合を残す形は、プロジェクトごとに軽い管理の仕組みを作るが参考になります。
今日やる 1 つは、「人が決めること」の 6 つに、自社の答えを 1 行ずつ書くことです。
次の回のAI でパワポの資料を作るでは、3 つのやり方で 8 ページの資料を作った結果と、頼み方を紹介します。
参考にした公式の情報
- Claude の料金
- Node.js v24 ドキュメント「SQLite」
- kintone「料金プラン」
- Microsoft「Power Apps の価格」
- AppSheet「Pricing」
- Lovable ドキュメント「Support Policy」
- Replit ドキュメント「Support Policy」
- e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」(第52条の7の3)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)
- 国税庁 タックスアンサー No.6625「適格請求書等の記載事項」
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「通常枠」(デジタル化・AI導入補助金2026)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「ITツール登録要領」(2026年5月15日改訂)

執筆者
株式会社Game 代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。
この記事は、Claude Code を使って執筆しました。画面の画像は、検証環境で実際に操作して撮影したものです(引用の画像は出典を記載しています)。内容の誤りはお問い合わせからお知らせください。
