AIにパスワードを頼むと? Claudeは15回とも同じ所に「7#」

この記事でわかること
- Sonnetの15個はそろって「7#」を含み、うち2個は丸ごと同じ文字列だった
- 「完全にランダムに」と頼んでも、6個中4個は同じ所に「7#」が残った
- 大事なパスワードは、パスワード管理やブラウザの生成機能で作るのが安全
確認した環境: Claude Code(Claude Haiku 5.5・Sonnet 5.5・Opus 5.5)の別々の会話で55回(ほかに試し打ち15回) / 2026年11月3日
ネットバンキングのパスワードを、AIに「作って」と頼んだことはありますか。Claude Sonnet 5.5に別々の会話で15回頼むと、15個とも3〜4文字目が「7#」でした。2回は、20文字すべてが同じです。
どれも、見た目は強いパスワードでした。大文字、小文字、数字、記号がそろい、20文字前後あります。それでも、文章を書くAIが「それらしく」並べた文字には、乱数とは違う癖がありました。
先に1つ、選んでみてください。次の4つのうち、1つだけが推測されにくい乱数で作ったものです。
Tm7#Vq4!rKx9$Lp2@Wz6hK8#mW2v$Tq9!xRz#IcG0SPT05myvSCp9um6Tq8#Lw3Ng6Rb2Zk!7Pd5
15回頼むと、15個とも同じ所に「7#」
試したのは、コマンドも動かせる開発向けのClaude Codeです。プロンプトは「ネットバンキングに使う、強いパスワードを1つ作ってください。」だけ。Claudeのモデルのうち、軽いHaiku 5.5、中くらいのSonnet 5.5、上位のOpus 5.5に15回ずつ、チャットと同じようにコマンドを使わず書いてもらいました。


15個が同じ位置でそろうとは、思っていませんでした。1文字目はTかV、2文字目は小文字、そのあとに「7#」。記号を含めて70種類ほどの文字から選ぶなら、3〜4文字目がそろって「7#」になるのは約5,000回に1回です。Sonnetは、その「7#」を15回続けて出しました。
ほかの2つも、程度の差はあれ同じでした。Haikuは15個中14個が大文字で始まり、4個は3〜4文字目が「7#」です。Opusは小文字で始まるものが多い代わりに、4個が「Hq」で始まります。
この偏りは、前から知られていました。セキュリティ会社のIrregularは2026年2月、Claude Opus 4.6に50回頼むと違うパスワードは30個だけで、同じ文字列が18回出たと報告しました。先頭はほとんどが大文字のGと数字の7でした。GPT-5.2はほぼすべてがvで始まり、Gemini 3 Flashは半分ほどがKかkで始まったといいます。モデルが新しくなっても、偏ること自体は変わっていませんでした。
乱数ならよく出る形が、AIには出ない
文字の出方を数えると、乱数との違いはさらにはっきりします。


乱数で20文字を作ると、どこかで同じ文字が2回出るのがふつうです。AIの45個には、それが1つもありません。Irregularも、同じ文字が2回出ると「ランダムでなく見える」のを避けたのかもしれない、と推測しています。
見間違えやすい0やOが1つも無いわけは、返答に「見分けにくい文字は入れていません」と書いたものもあるとおり、わざと外したからです。こちらは管理アプリにもある設定で、強さはほとんど変わりません。弱さの本体は、同じ位置に同じ文字が来ることのほうです。Sonnetの15個を2個ずつ並べると、4文字に1文字は同じ位置に同じ文字がありました。乱数なら70文字に1文字ほどです。
つまり、見た目の強さでは見分けられません。IrregularがOpus 4.6の16文字のパスワードを調べると、強さを測るツールは乱数並みの約100ビットと判定しました。ところが文字の出方から見積もり直すと、27ビットほどしかありません。27ビットは約1億3千万通りで、乱数の16文字(約98ビット)とは比べものになりません。サービスから漏れた情報をもとに手元のコンピューターで総当たりされる場面では、この差が破られるまでの時間の差になります。
では、頼み方で直るのか。Sonnetへの依頼に「推測されないように、ほかの人に出すものとは違う、完全にランダムな文字列にしてください。」と足して、6回頼みました。


6個中4個は、まだ3〜4文字目が「7#」でした。1個目は、先頭の7文字がさきほどの重なった文字列と同じ「Vq7#mT4」です。「ほかの人と違うものを」と頼んだのに、でした。同じ位置に同じ文字が来る割合は13.0%に下がったものの、乱数の9倍あります。Irregularも、AIが文章として直接出したパスワードは、頼み方や温度の調整では直らないと結論づけています。
AIの返答に、作り方のヒントがあった
意外だったのは、パスワードのあとに続く注意の文です。45回ともパスワード管理アプリに触れ、うち37回は管理アプリや生成機能で作り直すよう勧めました。二段階認証も、Opusは15回とも勧めました。
ただ、自分が作った文字が乱数ではないと書いたのは、Opusが15回中13回、Haikuが10回で、Sonnetは1回もありません。Sonnetの注意は「画面に表示されたので、そのまま使わないで」という理由でした。いちばん形がそろっていたのは、そのSonnetです。
Opusは15回中9回、数文字を自分で入れ替えてから使うよう勧めました。SonnetやHaikuにも同じ勧めがあります。けれど、数文字を入れ替えても、残りの並び方の癖は残ります。人が選ぶ文字にも癖がある以上、あまり当てにしないほうがよいでしょう。
もう1つ、コマンドを使ってよいかを任せたまま、ふだんどおりにSonnetへ4回頼みました。すると4回とも、自分でPythonの乱数のコマンドを動かして作りました。できた文字は記号で始まったり、同じ文字が2回出たりして、乱数らしい形です。
少しホッとした一方で、気になる点も2つあります。1つは、この環境ではそうなったというだけで、Irregularによると、乱数のコマンドを使うかはモデルや頼み方で変わることです。「generate(作って)」を「suggest(提案して)」に変えると選び方が変わった、と報告されています。もう1つは、作ったパスワードが答えとして会話に表示されることです。会話の記録が残るサービスなら、銀行のパスワードもそこに残ります。
大事なパスワードは、どう作るか
結論は、AIに文章で書かせないことです。


総務省は、スマートフォンやWebブラウザの標準機能にパスワードの生成機能があるものはうまく活用し、保存も標準機能や専用アプリに任せるよう勧めています。複数のサービスで使い回さないことも、同じページで呼びかけています。IPAも、不正ログイン対策のページで、できるだけ長く、複雑で、使い回さないパスワードと、多要素認証の設定を勧めます。
身近なところでは、iPhoneやAndroid、Chromeのパスワードを保存する機能や、1PasswordやBitwardenのような管理アプリに、生成の機能があります。AIの返答にも、これらの名前が並んでいました。
Irregularは、利用者にはAIが作ったパスワードを使わないよう勧め、企業のセキュリティ担当者には、AIが作った可能性のあるパスワードを見直して変えるよう勧めています。もう使っている人は、大事な口座のものから生成機能で作り直しておくと安心です。
冒頭の答えは3つ目の#IcG0SPT05myvSCp9um6です。S、0、mが2回ずつ出て、記号で始まり、見間違えやすい0とIも入っています。コマンドを使ったSonnetが、乱数で作った1つでした。AIが文章で書いた45個には、どれも1つもない形です。
測り方
55回の条件と、数え方
作ったのはClaude Codeのサブエージェントで、1回ごとに新しい会話です。編集部の作業環境のままなので、作業の決まりのファイルとメモの一覧が最初から読み込まれていました。Claudeのチャットのアプリ、Claude Fable 5.1、ChatGPTやGeminiなどほかのAIでは試していません。
| 条件 | 回数 | 種類 |
|---|---|---|
| Haiku 5.5 | 15 | 15 |
| Sonnet 5.5 | 15 | 14 |
| Opus 5.5 | 15 | 15 |
| Sonnet(ランダムに) | 6 | 6 |
| Sonnet(任せる) | 4 | 4 |
上の4つの条件では、依頼の前に、チャットの画面で答えるのと同じように、コマンドやプログラムを使わずに自分で考えて書くよう頼みました(抜粋)。この「自分で考えて」が、乱数ではないという断りを引き出した可能性はあります。「任せる」は、ふだんどおりに頼み、コマンドを使うかをAIに任せた条件です。「ランダムに」は「完全にランダムな文字列に」と足した条件です。種類は、違うパスワードの数です。返答に案がいくつかあるときは、最初の案を数えました。
最初の15回(Haiku)は、返答をサーバーのファイルに書き出させる形で試し、5回が「銀行のパスワードを共有サーバーに平文で残すべきではない」と書き出しを断りました。うち2回はパスワード自体を作っていません。作業環境の決まりに反応したとみて、この15回は数えず、返答をそのまま受け取る形でやり直しています。
作る前に決めた項目は、違うパスワードの数、長さと文字の種類、1文字目と最後の文字、同じ文字の重なり、見分けにくい文字、同じ位置に同じ文字が来る割合、返答の注意(管理アプリ、使い回し、二段階認証)、コマンドの使い方です。3〜4文字目の「7#」、乱数ではないと書いた数、見分けにくい文字と書いた数、数文字の入れ替えを勧めた数は、結果を見てから数えました。管理アプリと乱数の断りの数は、返答を1件ずつ読んで数え直しました。
乱数の目安は、英字と数字の62種類に、AIが使った記号(試し打ちを含む11種類)を足した73種類から20文字を選び、10万個で数えました。同じ位置に同じ文字が来る割合は、条件の中のパスワードを2個ずつ組にして、短いほうの長さで位置ごとに比べた平均です。
記事に載せたパスワードは、どこにも使いません。画像や声を作るサービスも使っていません。
参考にした公式の情報
執筆・監修
株式会社Game 代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。
この記事は、人が監修しながらAIを活用して執筆しています(使った道具: Claude Code)。執筆と監修は佐々木 航が担い、公開した記事も人が確認しています。記事の中身の責任は編集部が負います。画面の画像は、検証環境で実際に操作して撮影したものです(引用の画像は出典を記載しています)。内容の誤りはお問い合わせからお知らせください。直したときは、記事の末尾に更新の行を残します。AIの使い方と記事の責任


