機密情報とAI 第1回
AI に貼った機密は、どこへ行き、どこに残る? 経路と保存期間をたどる

この記事でわかること
- 貼った文字が残りうる 4 つの場所と、残る期間
- Claude・ChatGPT・Gemini の保存期間と学習の設定
- 貼らなくても送られるものと、手元に残る記録の実数
確認した環境: Anthropic・OpenAI・Google・Microsoft の公式のページ / Claude Code 2.1.296(VS Code の拡張機能)/ 手元の記録は編集部の開発環境で 2026年10月12日に数えた / 2026年10月12日に確認
AI のチャットに貼った顧客の名前や社外秘の資料は、どこを通って、どこに、いつまで残るのでしょうか。この記事では、貼った文字の行き先を、手元・通信・AI の会社のサーバー・そのほかの記録の 4 つに分けてたどります。Claude・ChatGPT・Gemini の保存期間と学習の設定も、公式の情報で表にしました。
先に結論: 残りうる場所は 4 つ

- ① 手元: コピーした文字はクリップボードに入ります。Claude Code のように手元で動く道具は、会話の記録をファイルにも書きます。
- ② 通信: 暗号化して送られます。届いた先では、AI が読める形に戻ります。
- ③ AI の会社のサーバー: 会話の履歴として保存されます。残る期間は、プランと設定で 72 時間から無期限まで違います。
- ④ そのほかの記録: 学習を許可した場合の学習用のデータ、規約違反の審査の記録、フィードバック、共有リンクです。年単位で残るものがあります。
「学習に使われない」ことと「残らない」ことは、別の話です。この 2 つを分けて確かめます。
① 手元: クリップボードと、道具が書く記録
クリップボード
コピーした文字は、まず OS のクリップボードに入ります。Windows で「クリップボードの履歴」をオンにしていると、25 件まで残ります。履歴は PC を再起動すると消えますが、ピン留めしたものは残ります。ほかの端末と同期する機能は、Microsoft アカウントか職場のアカウントに結びついています(Microsoft のサポートのページ)。
手元で動く道具は、会話をファイルに書く
ブラウザで使うチャットは、会話の履歴を AI の会社のサーバーに保存します。Claude Code のように手元で動く道具は、それに加えて、会話の記録を手元のファイルにも書きます。

公式のドキュメントには、次の注意が書かれています。
- 記録は暗号化されない文字のまま(平文)で、守りは OS のファイルの権限だけ
- 会話の記録には、AI が読んだファイルの中身や、コマンドの出力も入る
- AI が
.env(パスワードなどを書いておくファイル)を読んだり、コマンドがパスワードを表示したりすると、その値も記録に書かれる
Codex と GitHub Copilot の手元の記録は、AI コーディングの道具を安全に使うにまとめています。
編集部の開発環境で数えた
この記録がどのくらいの量になるかを、編集部の開発環境の 1 つで数えました。Claude Code(VS Code の拡張機能 2.1.296)を毎日使っている環境で、残す日数は既定の 30 日のままです。1 日に数十の会話が始まる使い方なので、下の数字は、ふつうの使い方より多いものです。数えたのは 2026年10月12日で、対象は件数と容量だけです。

- 会話の記録: 2,637 件、約 8.0 GB でした。会話の本体が 1,884 件(約 5.7 GB)、サブエージェント(AI が呼び出す別の AI)の記録が 753 件(約 2.3 GB)です。
- 30 日より前の会話: 会話の本体では 0 件でした。いちばん古いものは 9月14日で、既定の 30 日で消えていることになります。
- PDF と画像: ツールの結果の置き場に、PDF が 278 件、画像が 1,701 件ありました。この記事の調べものでも、AI の道具で官公庁の PDF を取得すると、その写しがここに保存されました。
- 書き換える前のファイルの写し: 5,144 件(約 102 MB)でした。うち 786 件は 30 日より前の日付で、会話の記録より長く残っているものがありました。
- 自動メモリー: 387 件でした。公式の説明のとおり、自動では消えません。
- ファイルの権限: 会話の記録 2,637 件のうち 2,636 件が、本人だけが読み書きできる設定でした。
入力の履歴(history.jsonl)と大きな貼り付けの置き場(paste-cache)は、この環境にはありませんでした。

件数と容量は、使い方で変わります。それでも、AI に見せたものが手元にまとまった量で残ることは変わりません。PC をなくしたり、PC ごと取ったバックアップが外に出たりすれば、この記録も一緒に出ていきます。サーバーで動かす場合は、記録は PC ではなくサーバーに残ります(サーバーで AI を動かすメリットとは?)。
残す日数は設定の cleanupPeriodDays で短くでき(最短 1 日)、claude purge でフォルダごとの記録を消せます。設定の入れ方は、第 3 回で説明します。
② 通信: 暗号化されるが、届いた先では読める
Claude Code は、入力した文と AI の答えを、TLS 1.2 以上(通信を暗号化する方式)で送ります。OpenAI も、法人向けのサービスについて、通信は TLS 1.2 以上、保存は AES-256 で暗号化すると説明しています。暗号化されるのは通り道と保存先で、AI が答えを作るときには、読める形に戻ります。
送られるのは、いま入力した文だけではありません。Claude Code の公式のドキュメントは、AI に渡す範囲(コンテキストウィンドウ)に、会話の履歴・ファイルの中身・コマンドの出力・CLAUDE.md・自動メモリーなどが入ると説明しています。一度貼った文字は、その会話の履歴に入ったままになります。
貼らなくても送られるもの

- AI が読んだファイル: 中身が会話に入ります。設定ファイルや顧客の一覧も同じです。
- コマンドの結果: 画面に出る文字が、そのまま会話に入ります。
- エディタで選んでいる範囲: VS Code の拡張機能では、選んでいる文字と、開いているファイルの名前が、自動で AI に渡されます。読ませない設定(deny ルール)にしたファイルは渡されません。
- いつも読み込まれる指示とメモ: CLAUDE.md と自動メモリーは、会話を始めるたびに読み込まれます。
「貼らなければ大丈夫」ではありません。AI が触れる範囲が、送られる範囲になります。読ませない設定の書き方は、AI コーディングの道具を安全に使うで説明しています。
③ AI の会社のサーバー: プランで決まりが違う
届いた先での扱いは、個人向けのプランか、法人向けのプラン・API かで大きく違います。
個人向けのプラン

- Claude(Free・Pro・Max): 学習に使うかを自分で選びます。消した会話は、30 日以内にサーバーから削除されます。学習を許可すると、そのあとの会話は、個人と切り離した形で最長 5 年、学習用のデータに残ります。Claude Code をこのプランで使う場合も同じで、許可しない場合の保存期間は 30 日です。
- ChatGPT(Free・Go・Plus・Pro): 止めなければ、会話が学習に使われることがあります。会話は消すまでアカウントに残り、消すと 30 日以内に完全に削除されます。すでに個人と切り離されたものや、安全・法律上の理由で残すものは除かれます。
- Gemini アプリ(個人の Google アカウント): Keep Activity(アクティビティを保存する設定)がオンなら、会話は学習を含むサービスの改善に使われ、一部は人のレビュー担当が読みます。既定では 18 か月で自動で消えます。オフにしても、72 時間は保存されます。
法人向けのプランと API

法人向けのプランは、3 社とも、既定では学習に使いません。API も、Gemini API の無料枠を除いて同じです。ただし、保存はされます。
- Claude: API に送った入力と出力は、30 日以内に自動で削除されます。Team や Enterprise の会話は製品の中に保存され、消すと 30 日以内に削除されます。保存しない契約(ZDR: Zero Data Retention)は Enterprise の標準には含まれず、Anthropic の確認を通った組織だけが使えます。
- ChatGPT と OpenAI の API: Business・Enterprise・Edu は、管理者が保存期間を決めます。API は、不正利用を見張るための記録が最長 30 日残ります。ZDR には、事前の承認が必要です。
- Gemini: Google Workspace では、許可なく学習に使わず、人のレビューもしないと説明されています。Gemini API は、無料枠と有料で扱いが違います。無料枠は製品の改善に使われ、人が読むことがあります。規約には、無料枠に機密や個人の情報を送らないように、と書かれています。
「学習に使わない」と「残らない」は別の話

- 規約違反と判定されたとき: Anthropic は、利用ポリシーの違反と自動で判定された会話の入力と出力を最長 2 年、判定の点数を最長 7 年保存します。ZDR の契約があっても、違反と判定された入力と出力は最長 2 年残ることがあります。
- 評価やフィードバックを送ったとき: Anthropic は、評価(高評価・低評価)やバグの報告と一緒に送られた会話を 5 年保存し、学習に使うことがあります。OpenAI も、学習を止めていても、評価を送った会話は全体が学習に使われることがあると説明しています。
人が見るのは、どんなとき

- Anthropic: 既定では、社員は会話を見られません。例外は、本人がフィードバックとして送ったときと、利用ポリシーの審査が必要なとき(決められた担当者だけ)です。
- OpenAI: 許可された担当者と委託先が、不正利用やセキュリティの調査、サポート、法的な対応、モデルの改善(学習を止めていない場合)のために見ることがあります。
- Google: Keep Activity がオンのとき、会話の一部を人のレビュー担当が読みます。Google は、レビュー担当に見られたくない機密を入力しないよう案内しています。
④ そのほかの記録: 共有リンクと法的な手続き
学習用のデータ・規約違反の審査の記録・フィードバックの保存期間は、③ の中で見ました。ここでは、共有リンク・法的な手続き・保存される国を確かめます。
- 共有リンク: ChatGPT の個人のアカウントで作った共有リンクは、リンクを知っている人ならだれでも開けます。OpenAI は、共有する内容に健康の情報・お金の情報・パスワードなどを入れないよう案内しています。
- 法的な手続き: AI の会社の決まりより、裁判所の命令が優先されることがあります。OpenAI は 2025年、The New York Times などとの裁判で、消した会話を含む個人向けの ChatGPT と API のデータを、無期限に保存するよう命じられました。この義務は 2025年9月26日に終わりましたが、2025年4〜9月の一部のデータは、引き続き保管していると公表しています。
- 保存される国: Anthropic は、法人向けの製品のデータを米国に保存すると説明しています。OpenAI は、個人向けのサービスの内容を、米国と世界各地のシステムに保存すると説明しています。
自分の使い方で確かめること

貼った文字の行き先は、手元・通信・AI の会社のサーバー・そのほかの記録の 4 つです。どこに、どのくらい残るかは、プランと設定で決まります。まず、上の 6 つを自分の環境で確かめてください。
次の回の個人情報や機密を AI に貼るのは、本当にダメ? 法律・契約・技術に分けて考えるでは、貼ってよいかどうかを、法律・契約・営業秘密・技術の 4 つに分けて整理します。
参考にした公式の情報
- Claude Code ドキュメント「Data usage」
- Claude Code ドキュメント「Explore the .claude directory」
- Claude Code ドキュメント「How Claude Code works」
- Claude Code ドキュメント「Use Claude Code in VS Code」
- Claude Code ドキュメント「Zero data retention」
- Anthropic Privacy Center「How long do you store my data?」(個人向け)
- Anthropic Privacy Center「How long do you store my organization's data?」(法人向け)
- Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(個人向け)
- Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(法人向け)
- Anthropic Privacy Center「How does Anthropic protect the personal data of Claude users?」
- Anthropic Privacy Center「Where are your servers located?」
- OpenAI ヘルプセンター「Data controls in ChatGPT」
- OpenAI ヘルプセンター「Chat and file retention in ChatGPT」
- OpenAI ヘルプセンター「How your data is used to improve model performance」
- OpenAI ヘルプセンター「How OpenAI handles data in consumer services」
- OpenAI ヘルプセンター「Sharing conversations and scheduled tasks in ChatGPT」
- OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」
- OpenAI API ドキュメント「Data controls in the OpenAI platform」
- OpenAI「How we're responding to The New York Times' data demands in order to protect user privacy」
- Google「Gemini Apps Privacy Hub」
- Google Workspace「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」
- Google AI for Developers「Gemini API Additional Terms of Service」
- Google AI for Developers「Abuse monitoring」
- Microsoft サポート「Using the clipboard」
執筆者
株式会社Game 代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。
この記事は、Claude Code を使って執筆しました。画面の画像は、検証環境で実際に操作して撮影したものです(引用の画像は出典を記載しています)。内容の誤りはお問い合わせからお知らせください。
連載
機密情報とAI全 3 回の目次
- 1AI に貼った機密は、どこへ行き、どこに残る? 経路と保存期間をたどる(この記事)
- 2個人情報や機密を AI に貼るのは、本当にダメ? 法律・契約・技術に分けて考える
- 3それでも機密を AI で扱いたいときの方法 手間の小さい順に 6 つ
